Saturday, 28 August 2010

刀剣協会

最新の会報。
顧問寺尾氏「協会をめぐる諸問題」より。

・・・親しくしている刀剣商の方から怪文書を見せられ、日本美術刀剣保存協会をめぐる混乱を知ったことでした。三名の解雇を皮切りに、協会を巻き込んだ訴訟合戦が展開され、新聞や雑誌、さらに、国会でも取り上げられるようになってしまいました。こうした状況が続くならば、公正な鑑定という協会が担っている最も重要な役割にも、傷がつくことになりかねません。

中略

刀剣取引をめぐり不正があるとの告発が、文化庁に対して行われ、平成十三年十月に文化庁は協会を実地調査し、「刀剣および刀装具の審査については、今後は財団の役員、審査員、職員ならびにその親族は申請できないように改善していただきたい」と、指導しました。いわゆる窓口規制という制度の導入です。これを受けて協会は同年十一月に報告書を提出し、窓口規制の実施を文化庁に約束しました。
一部の役印が特定の刀剣商と癒着して、刀剣の審査をゆがめ、不正に利益を得ているというのが告発の内容でした。刀剣協会をめぐっては、昭和五十六年に、ブローカーが持ち込んだ偽造刀に認定書が乱発されるという問題が明らかになり、全理事が辞任したということがありました。こうした経過もあり、文化庁は不正防止策の徹底を求めたのでした。
窓口規制の導入を文化庁に対し約束した協会の報告書は、当時の山中貞則会長が決裁し、文化庁に提出されました。しかし、実際には窓口規制が実施されていないとの情報が文化庁にもたらされます。
文化庁は平成十八年五月、協会に対し、内部調査を実施して報告するよう求めました。同年七月に「刀剣審査に係る申請書等の調査結果及び改善の方策について」という文書をまとめますが、正式には文化庁に提出されませんでした。
そして、協会は橋本龍太郎前首相の急逝で空席となっていた会長について、平成十八年八月十四日の緊急理事会で、佐々淳行氏を後任に選出します。その日のうちに後藤保孝常務理事兼事務局長、野原龍太郎会計課長、日高祥勝庶務課長兼管理課長が解職になるという、クーデターとも形容できるような人事が行われます。
そのうえで協会は、翌十五日に文化庁に報告書を提出します。「窓口規制は差別を行うことになり妥当ではないとの結論に至った」というのが内容でした。
内部調査の結果では、平成十三年十二月以降、同十八年三月までに、協会の理事、職員とその親族、審査員が、審査を請求した違反件数が五百件以上あったものの、窓口規制の導入拒否と同時に、刀剣協会は、違反者の処分を行わないことも決めました。これでは、窓口規制の導入を記した平成十三年十一月の協会の報告書とつじつまが合いません。しかし、佐々氏は、この平成十三年十一月の報告書にういて、関知しないという立場をとりました。窓口規制の導入は、当時の専務理事で事務局長を兼務していた鈴木嘉定氏(故人)が、理事や職員にまったく知らせずに勝手に行ったというのが理由です。
協会が訴訟合戦に巻き込まれる背景をまとめると、このようなことになると思います。
次に、訴訟の経過です。新聞や雑誌などで、内紛として報じられた協会の運営をめぐる訴訟の中で最大のものは、協会が平成十八年に行った後藤事務局長など三名の解雇・雇用打ち切りの当否をめぐる訴訟でした。東京地裁は一昨年五月に解雇・雇用打ち切りを無効とする判決を下しました。昨年五月の控訴審判決でも東京高裁は東京地裁の判決を支持する判断を示しています。協会は上告しましたが、最高裁の判断も変わりませんでした。
また、協会の今度の法的位置づけの問題もあります。協会は民法の規定に基づいて設立された公益目的の財団法人で、税制優遇措置の対象となっています。さらに、国は文化財保存法にもとづき協会を選定保存技術保存団体に指定して、刀剣技術の伝承のため補助金も支給してきました。ところが、こうした優遇措置は現在受けられなくなっています。協会への信頼に傷をつけると同時に、経済的にも不利益をもたらすことになっています。
裁判をいたずらに引き延ばした結果、訴訟経費が重くのしかかり、協会の財政は平成十九年度に減少に転じました。それまでの過去七年間は黒字だったのが、赤字に転換し、さらに翌二十年度には、正味財産は一億四千万円余も減少しました。
また、文化庁後援名義使用、補助金の支給がとまってしまったのは、所管官庁の文化庁の指導に協会が従おうとしないことが原因です。窓口規制の導入をめぐる経緯をたどれば、明らかでしょう。
一方、国は公益法人改革を進めており、協会のような特例財団法人は、一般財団法人か公益財団法人のいずれかに移行する手続きをとらねばなりません。刀剣に関する技術を伝承し、愛好家の期待に応えるという刀剣文化の振興のためには、協会が公益財団法人と認定され、寄付や事業収入に対する税制の優遇措置を受けられるようにしなければならないというのが、協会の会員の総意だと思います。
しかし、佐々前会長のように、文化庁の指導を無視し、対立的とも受け取られるような運営を続ければ、協会が公益財団法人の認定を受けるのは無理です。
そうしたいきさつを経て、協会がこの苦境から抜け出すにはどうしたらいいのか、有志が繰り返し協議してきました。さまざまな意見が出され、検討をしてきましたが、本来なら、混乱を収拾すべき立場にある佐々氏が、判決に従おうとしないうえ、文化庁ともぎくしゃくした関係を続けていることが、最大の障害であることははっきりしています。
現在の体制で事態を打開するのは無理だという結論に至り、佐々氏に会長を退いていただき、人心を一新する以外にないということになりました。佐々氏に対しても、こうした点を示して説得にあたり、理解を求めました。その結果、六月二十四日の理事会で、佐々氏が退任願いを提出され、承認されました。
新たな会長には、村山弘義元東京高検検事長、副会長には黒澤正和元警察庁生活安全局長が就任することになりました。
そして、新体制のもとで当面の課題として取り組んだのが訴訟の終結でした。現在は、係争中の訴訟等は一切ありません。

(後略)

1 comment:

  1. ガツンと一喝とかやってる場合か・・・?
    佐々氏ご本人に誰かガツンと言ってやってよ・・・
    でも文化庁勧告も高裁判決もムシするくらいだから
    聞く耳はもってないのでしょうね。
    危機管理って他人の意見聞かないことなのかしら???

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